「ふざけるな!!そんな偽善に満ちた優しさで何が救える!!お前や火伏当主のせいでどれだけの人間が死んだと思っている!!鬼と戦い死んでいった者達は……残された家族はどんな思いをして来たのか分かっているのか!!」
四十代……多分父と同じぐらいの年に見える男の人は、声を荒げ机を力任せに叩いた。
「私の息子も鬼との戦いで命を落としました。いつか帰る巫女を、いつか戻る結界を、いつか来る平和の時を信じて死んでいったのです。その気持が貴方に分かるのですか?」
女の人はそう言って悲しそうに俯くと、微かに肩を震わせ静かに涙を流した。
それを見て父は悲しそうに表情を曇らせると、それから小さく口を開く。



