「土室さん!」 彼の名を呼んで彼の顔を覗きこむと、彼は静かに目を開く。 「……凪……様?……ここ……は?」 彼は覚束ない視界で辺りを見回すと、困惑した様に私を見つめた。 「あの鬼に襲われた後、ずっと意識を失っていて……でも、よかった。目が覚めて」 そう言ってホッと息を吐くと、土室さんは静かに視線を落とす。 「……手を」 彼のその小さな呟きに、慌てて握ったままの手を放した。