「お前は遥様によく似ている。……本当によく似ているよ」

「……お母さん…に?」

「彼女もお前と同じ事を言っていた。何もせずに諦めたくないと」

朧源はそう言って悲しそうに俯いた。

それから静かに背を向けると、そっと顔を上げる。

「しかし彼女は死んだ。この呪縛を破る事が出来ないまま」

彼はそれだけ言うと、そのまま廊下の先へと消えて行く。

消えて行く彼の後ろ姿を見つめたまま、思った。

……それでも私は諦めたくない。

心の中で小さく呟き、グッと拳を握り締めたまま空を見上げると、漆黒の空に浮かぶ美しい月が……悲しく揺れた様な気がした。