「……朧源さま」 少年が小さく男の名を呼ぶと、男は鋭い視線を少年に向ける。 「去れ」 男が少年に向かって冷たくそう言うと、少年はペコリと頭を下げ、少し窺う様に私を見た。 「いいのよ……千尋。行きなさい」 私のその言葉に少年は悲しそうに瞳を揺らすと、そのまま身を翻し走り去って行った。