「そのバッジ……大切にして下さい。きっと凪様の力になってくれるはずです」

そう言って彼は立ち上がると、そのまま廊下へと歩いて行く。

「ま、待って!バッジの事……何か知ってるの?」

彼を呼び止めそう問い掛けると、彼はニッコリと笑みを返した。

「秘密です」

そう言って木住野さんは人差し指を口元で立てて見せると、クスリと笑って私に背を向けた。

「それじゃ、また明日」

彼はそれだけ言うと、そのまま部屋を出て行ってしまった。

離れて行く彼の足音を聞いたままギュッとバッジを強く握り締めると、握り締められた手の中で小さく猫の鳴く声が聞こえた様な気がした。