「……どこに向かっているの?」 その私の問いに、黒服の男は答えない。 まるで人形の様な無表情を崩さないまま、私を逃がさない様に気を張っている事だけは分かった。 さっきから何を聞いても黒服の男は答えてくれない。 黙れとも言わず、私の話を聞くでもない。 何の反応も見せない男が怖かった。 男に質問するのを諦め、シートにそっと背中を付ける。 それから小さくため息を吐くと、父のボロボロの姿を思い出し、また不安に駆られた。