「今すぐに決めろとは言わない。しばらく考えるといい」 鬼はそう言って笑うと、私に向かってそっと手を伸ばした。 ビクリと身を竦めてギュッと目を閉じるが、鬼の手が私に触れる事は無かった。 そっと目を開くと、鬼は私の肩に乗ったままの猫の頭を優しく指で撫でている。 猫は嬉しそうに喉を鳴らし、男の指に体をすり寄せていた。 「この館の中は自由にして構わない。しかし外には出れないがな」 男はそう言うと、そっと扉に向かって歩いて行った。