「あ、ありがとう」 彼の背中にそう礼を言うと、少年は歩く足を止めた。 「別に」 少年は少しだけ私を振り向いてそう呟くと、そのまま部屋の外に出て行った。 ガチャリと錠の掛る音が聞こえ、少年の足音が遠くなっていく。 その遠くなる足音を聞きながらそっと不思議な猫の頭を撫でると……彼が最後に見せた優しい赤い瞳を思い出し、小さく微笑んだ。