「私は……何も出来なかった。ただ彼女の傍に居る事も叶わなかった」 そう言って父は悔しそうに、俯いてしまった。 「……お父さん」 父の震える手を……そっと握る。 「お前が生まれた後、私は一族の目を縫って彼女に会いに行った。もちろん……命を掛けてだ。そして彼女は私にこう言った」 父はそこまで言うと、真っ直ぐに私を見つめた。