あれから暫く歩道を進むと、黒塗りの車が停まっていた。 「乗って行け。火伏のビルまで行くんだろう?」 そう言って眞水さんはため息を吐いた。 その彼の問いに、思わずゴクリと息を呑んだ。 ……誰にも話してはいけない。 これから火伏さんのビルに行って、お父さんに会わせてもらう。 その事は誰にも話してはいけない約束だった。 眞水さんは全てを見透かす様な不思議な瞳で私を見つめている。 ……どうしよう。 窺う様に火伏さんを見ると、私に向かって小さく頷いて返した。