しばらくして、仁央様は口を開かれました。
「紅朧」
「はい」
 仁央様は手のひらを返して示します。
「ここにお座り」
 ここ、それは仁央様の指貫の上、わたくしの場所。
「はい」
 わたくしはそうして再び、仁央様に包まれました。




 仁央様、わたくしは仁央様と過ごした日々を決して忘れません。
 仁央様の温もりを決して忘れません。
 仁央様の香りを決して忘れません。
 仁央様に慈しんで頂いたことを決して忘れません。
 仁央様に頂いたこの名前を決して忘れません。
 仁央様を慕っているこの気持ちを決して忘れません。
 仁央様を決して忘れません。

 仁央様。