あの笑顔は忘れない。
俺が幼い頃にずっと見てきたものだった。

あいつは・・・
中村碧だ。
もう5年はあってない。
でもあいつの顔はまったく変わっていなかった。
「おい、佐藤！どこいくんだ？」
「ちょっとトイレへ」

男に声をかけてみる。
「あのー。人違いでしたらすみませんが…中村碧さんですか？」
確信はない。
もしあっていたとしても自分のことを覚えてるとは限らない。
しかし男は俺に向かって微笑んできた。
「久しぶりだね」
「なっ!!」
その言葉に驚きを隠せなかった。
碧は俺を覚えてた。
自分でも昔とイメージをかえていたつもりなのに。
そして碧は俺に気づいてた。
「お、覚えてんのか俺のこと」
「拓海でしょ。ずっと会いたかったよ」
やっぱり碧だった。
しかし顔は同じでも何か違和感を感じる。
ずっと微笑んでいるからだ。
碧はこんな感じじゃなかった。
その微笑みは普通の人がみれば印象がいいが、
俺にとっては少し気味が悪かった。
「どうしたの。大阪いたんじゃないの？」
「ああ。俺もこっちで働くことになってな」
「そうなんだ！じゃあこれから遊べるね！」
遊ぶ。こいつの心はまだ幼ないのか。
「そうだな」
俺は笑顔で返した。