ファイルを机の上に置き、立ち上がった僕は、二見ちゃんの肩を軽く叩き、言った。
「 これもみんな、お前たち部員たちが、あたしを支えてくれているお陰だ。 感謝しているよ 」
二見ちゃんは、肩に置いた僕の手を両手で持ち、じっと僕を見つめた。
「 ? 」
・・・ナニやら、イヤな予感。
二見ちゃんが言った。
「 すべて、会頭の指導力の賜物です・・・! 私たち・・ どこまででも、会頭について参ります 」
「 ・・お、おう。 期待してるよ。 共に、学園の治安維持に奮闘しよう 」
二見ちゃんは、僕の手を更に強く握り、じっと僕を見つめている。
「 ・・・二見・・? 」
「 会頭・・・! 因幡付属の戸村さんを、好意にされておられるのは、充分、存じております・・・ でも・・ 私だって・・・! 」
そう言いながら、僕の胸に顔を寄せる、二見ちゃん。
やっぱ、来た~っ! また、この展開だ。 イカン、イカンぞ~・・! しかも今度は、同じ鬼龍会の幹部だ。 邪険にすると、頑丈な一枚岩にヒビが入りかねん! これは、ある意味、危機だ・・・!
僕は言った。
「 二見・・! 嬉しいが、あたしは・・・ 」
「 分かっております・・・! 戸村さんがいらっしゃるのは、重々、承知しております 」
・・・いや、あのね・・・ その見解も、間違ってるんだけど?
二見ちゃんは続ける。
「 私は、こうしているだけで良いのです・・・ 星川会頭の胸に、抱いて頂けるだけで充分なのです。 ああ、会頭・・・ お慕い申しております・・・! 」
何と、ささやかな愛。
まさに、純愛の情だ。 今時こんな、従順な情愛を見せる子がいるだろうか?
僕は、ある意味、感動した。 戦前のトーキー純愛映画を見ているようだ。
我が心、熱きときめきに、君、思ふ・・・
・・イカンッ! 自己陶酔しとる場合か! ここは、体が戻った星野の為にも、キッチリ、けじめを付けておかない事には・・・!