店内に入って来た彼らは、真っ直ぐ、こちらに向かって来る。
緊張の一瞬。
星野は、缶を握り締めている。 いざとなったら、コレが凶器に変わるのだろう。 イイね、転機が効くヒトは・・・! 僕もう、心臓バクバクなんだけど。 ・・・わあ、来た来た、来たよう~・・・!
「 鬼龍会の、星川さんですね? 」
僕に聞く、眉毛の無い男。
違います。 前に座っているのがそうです。 ・・・マジで、言いそうになった。
「 ・・・だったら、どうなんだ? 」
マトモに答えればいいのに、ナンで相手を挑発するよーな言い方してんだ、僕は! 当の星野は、心なしか、ニヤニヤしている。 自分の顔だけに、キモチ悪い。 ヤメれ、その顔。
突然、星野が、眉毛無しの男の股間に蹴りを入れた。
「 うぶ、おぉぉ・・・っ!! 」
コレは、入った。 完璧に、眉毛無しの玉を捕らえたようだ。 自分がフロ場で経験した事を、着実に行動に活かすトコなんざ、見事である。
星野は、眉毛無しの腕を掴むと、自分の横の空いていた席に無理やり引き込み、座らせた。
眉毛無しは、テーブルに額を当てて突っ伏し、股間を押さえながら、ウンウン唸っている。
僕は、傍らにいたパイナップルの房みたいな髪型をした、背の高い金髪の男を睨みながら、僕の横の席を指差し、座るよう勧めた。 金髪男は、米つきバッタのように何度も小刻みに頭を振り、申し訳無さそうに、ちょこんと僕の横に座った。
残った一人。
ジャニーズ系の髪型をした男だ。 さて、どうするか・・・ 彼は、隣のテーブルからイスを引いて来ると、これまた、ちょこんと誕生日席に座った。
・・・無言。
じっと座る、五人。 はたから見れば、異様な風景だ。
口火を切らなきゃならんのは、どうやら状況的に僕のようだ。 何と言って、切り出そ
うか・・・?