桜ヶ丘高校の代表は、藤川とは対照的な、運動会系のがっしりした体格の男だった。
「 ちいっす、星川会頭! 桜ヶ丘の、有堂っス。 お疲れ様っス! 」
また話しを合わせなくてはならんようだ。 面倒くさい。
とりあえず、当り障りの無い挨拶を交わす。
「 有堂か。 元気そうだな 」
「 ういっす! 体を動かすしか、能がないっスから 」
そのようだね。
「 あたしの代わりに、タイマン・・ 出るか? 」
「 冗談、ポイですよ、会頭 」
冗談ではない。 半分以上ホンキだ、ゴリラ。
有堂が言った。
「 海南の斉木は、先週、稲辺第一高の龍川を刺して、大ケガ負わせたヤツですよ? そんなアブナイやつと、タイマンなんて・・ 出来るワケ、ないじゃないっスか 」
・・げげっ。
「 オマケに、副長の武村は、少林寺の師範代ですよ? 実家は、かなり大きな道場を経営していましてね。 過去、何人も、大会へ輩出してます。 スタミナと、怪力だけの自分なんて、足元にも及びませんよ 」
・・・僕、帰ろかな。 ダメ?
有堂は、更に僕の耳元に寄り、小さな声で言った。
「 ・・・武村は、キレたら怖いですよ・・・! 見境が、ないっスから。 ほら、先月の、北区でのパトカー襲撃・・・ あれ、やっぱ、ヤツでしたわ 」
ウチの正木ちゃんも、見境、ないらしいよ?
そのまま有堂は、僕の耳元で続ける。
「 警官、気絶させて逃げたのも、そうらしいっス・・・! 」
メチャクチャ、やっとるな。
次第に、鼻息が荒くなる有堂。
「 ・・か、会頭・・・ 」
「 何だ? 」
「 いいニオイっス・・・! 」
離れろ、てめえっ! 変態かっ・・・! 僕は、男だぞ? ・・・中身だけ、だけど・・・