やがて、星野から追伸が届いた。
『 打った瞬間、ボクッ、という音がしたが、割れてはいないようだ。 安心しろ 』
割れてたまるか! そんなんっ! 卵じゃねんだぞ?
・・・ボクッ、か・・・ 生々しい表現だ。
苦しさに、のた打ち回る姿が、目に浮かぶわ。 相当、強くヒットさせたようだな、星野。
しかし、僕は、見ただけだが・・ ソッチは、見た上に、触ったな? いっこ、多いじゃないか! 不公平だぞ? くそう・・・
つまらん理屈に、不満を感じながらも、目隠しを再開し、髪と体を洗う。
( ・・・ん? シャンプーが、ないぞ? ドコ行ったんだ? )
いつもの、トニックシャンプーがない。
目隠しをずらして探すと、母が使っているメ○ットの横に、見慣れないシャンプーがあった。
( これか・・・ 高そうなヤツだな。 シャンプーなんて、どれでも同じだろうが )
男には分からない、女性ならではの、こだわりというヤツなのだろう。
ポンプを押すと、明らかにいつものシャンプーとは違う、高級そうな液が出て来た。 どえらい泡立ちである。
( 結構、いいな、コレ。 泡立ちが、違うぜ。 香りも良いし・・・ )
ボトルを戻すと、もう一本、同じようなボトルが手に触れた。
「 ? 」
再び、目隠しをずらして見ると、同じようなデザインのボトルがある。
「 ・・・・・ 」
表示を読むと、ヘア・トリートメントとあった。
「 リンスか・・・ どうやって、つけるんだ? 」
使用方法を読み、納得する。 ・・・面倒くさい。
女性は、いつも、こんな面倒くさいコトして、ヘア・ケアをしているのか?
・・・省略してやろうか?
しかし、バレたら、星野に怒られるのも、想像がつく。
仕方ないな・・・ 僕の、体じゃないんだし。 ええっと、まず、適量を手に取り・・? 髪になじませて、と・・・ふむ、ふむ・・・
ええいっ、目隠しが邪魔だ。 大体、目隠ししたまま髪を洗う事自体、無理があるわ。
( ・・・取っちまえ! どうせ、鏡は曇ってんだ )
目隠しを取ってみた。