少々、キツイ性格の印象を受けるルックスだが、知的な顔立ちだ。
オバハンに変身してなくて、良かった・・・
しかし、どうするよ?
健一なんぞに見せたら、それこそ笑いの種だ。
ソッコーで写真を撮られ、携帯で、朝一番のスクープ映像が、友人に配信されるのは
間違いない。 とりあえず、ヤツには今日、会わないでおくか・・・
ちなみに、僕には、交際一年になる『 河合 かすみ 』と言う彼女がいる。
・・・これで、破綻が来るやもしれない。 ああ、どうしよう・・・!
こういう時に限って、朝っぱらから携帯が掛かって来るものである。
僕は、試しに、声を出してみた。
「 あ~ 」
・・・女の声だ。
ご丁寧に、声質まで変わっている。 これじゃ、携帯にも出られない。
とりあえず、留守電モードにしておくか・・・
タオルで顔を拭き、再び、鏡に映った自分の姿を、しばらく、呆然とみつめていた僕は、
ふと、ある事に気が付いた。
「 ・・・第一の難関が、この後、すぐにあるぞ・・・! 」
奥の台所からは、母が、新聞を広げている音がする。
何と言って、説明すればいいのか?
朝起きたら、こうなってたんだから、僕には、何の責任も無い。
しかし、どうやって切り出すか・・・?
「 こんなん、出ました 」
・・・イキナリこれでは、母の心臓が、停止する可能性がある。
「 どもども~! 」
・・・一一〇番通報、するかもしれん。
「 初めまして。 満です 」
・・・精神病院に、電話するかもしれん。
実は、僕の母は、空手三段である。
不審者として、朝稽古の練習台にされる可能性が高い。 僕は、そっちの方が、心配だ。
勝気で、おっちょこちょいの母だからな。 だから、親父に愛想つかされて、離婚されるん
だ。 あれは確か、僕が、小学校五年の時だった。
親父が改まって、神妙な顔で離婚話しを持ち掛けたら、母は、
「 あっそう、いいよ 」
だったもんな・・・ まあ、ドロ沼の様相を呈するよりは、良かったケド。
( よし、ここは、ナニくわぬ顔で行こう・・・! )
出た所勝負だ。
ヘタに小細工したって、事実は事実だ。 何か知らんが、朝起きたら、こうなってたんだか
ら、仕方ないじゃないか。 僕のせいじゃない。