幸い、トイレには誰もいなかった。
・・・いた。 人形が・・・!
「 やあ、星川君。 久し振り! 元気にしておるかね? 」
・・・殺すぞ、お前。 四時間ほど前に、会っただろうが?
人形は言った。
「 いやあ~、どうしているか、心配になってね 」
そんでもって、トイレに視察か?
僕は、これから、一世一代のアブない作業をするのだ。 手元が狂って、触っちまったらどうすんだよ・・・! かすみに、顔向け出来なくなるじゃねえか! いいから、あっち行け!
僕は、我慢出来なくなって来た尿意に、声を震わせながら言った。
「 い・・ 今、大変なんだ・・・! あとでな。 な? 」
にこやかに答える、人形。
「 そんなこと言って、ホントは、私と遊びたいのだろう? 」
・・・ドコから、そんな発想が出て来る? はよ、消えい。 頭、ひねりちぎったるぞ!
いかん・・! 限界だ。 漏れる・・・!
サバラスが言った。
「 どうしたのかね? 顔色が悪いが? 」
・・て・・ てめえのせいだ・・ っちゅうに・・・!
もう限界である。
その時、ドアを開けて、数人の女生徒が入って来て言った。
「 会頭・・! 誰か、男のような声が聞こえましたがっ・・・! 」
例の、親衛隊の連中だ。
人形サバラスは、消えていた。
自分でも感心するくらい落ち着き、僕は、何事も無かったように答えた。
「 私以外、誰もいないが? 」
「 ・・・失礼致しました・・・ 」
トイレ内を見渡し、ドアを閉めて、女生徒たちは出て行った。