店の外に出た僕らに、尚も、母親がすがる。
「 祥一っ! 目を覚ましなさい! 祥一っ・・・! 」
その時、一人の男が駐車場の方から母親に近付き、持っていたバックを引ったくった。
「 ・・あッ! 」
男は、通りの方へ逃走して行く。 引ったくりだ・・・!
「 母さんっ・・・! 」
引ったくられた反動でよろめき、倒れた母親の元へ、祥一が駆け寄った。
「 だ・・ 大丈夫かいっ? ケガは? 」
「 大した事、無いわ。 大丈夫よ。 それより、バックが・・・! 」
逃げた男は、中年のような感じだった。 手馴れた手つきだ。 常習犯か?
「 くそうっ・・! 母さんが大切にしていた、おばあちゃんの形見のバックをっ・・・! 」
祥一が、口惜しげに、逃げる男の背中を見た。
僕は叫んだ。
「 祥一さん、警察に電話よッ! お母さんを、お願いっ・・・! 」
僕は、男の後を追って走り出した。

逃走する男は、やはり中年らしい。
走っている後ろ姿から、それは推察出来た。
体力の無い僕だが、歳では勝る。 逃すかっ・・・! いいトコ見せて、あの高慢な母親を見返してやらねば!
借りを作っておけば、美津子先生の印象も改善するだろう。 一肌、脱いでやる・・・!