やがて、一人の中年婦人が、僕らのテーブルの脇に立った。
「 ・・か、母さん・・!? 」
婦人を見た祥一が、驚いて言った。
・・・これが、問題のお母様か。
明るい色のヘアカラーで髪を染め、細身の老眼鏡を掛けている。 グレーのワンピースを着て、小脇に小さなハンドバックを持ち、上品な雰囲気はするのだが、表情は険しく、汚いモノを見るような目で僕を見ていた。
祥一が言った。
「 ど・・ どうして、ココに? 」
お母様は答えた。
「 あなたには、監視の目を付けておきました。 まったく・・・ 暗闇で、女性を待ち伏せするなんて・・・! 何て、恥ずかしい事してるの、あなたはっ・・・! 」
・・・おカン、探偵を雇ったな?
ココは、とりあえず挨拶をしなくては・・・
僕は、立ち上がり、お辞儀をしながら言った。
「 お母様、初めまして。 高田 美津子と申します 」
「 あなたに、お母様と呼ばれる筋合いは無いわっ! さ、祥一。 帰るわよ。 このテーブルの清算は、済ませてあります 」
ドラマを見ているような展開。
とりあえず、この母親には、ハラが立って来たぞ? 延髄切りを食らわせてやろうか・・・!
祥一が言った。
「 勝手なコト、すんなよっ! オレは、帰らない。 放っといてくれ! 」
祥一は、僕の手を掴み、店を出ようとした。
「 待ちなさい、祥一! あなたは、騙されてるのよっ? 」
騙しとらん、ババア!
愛し合う二人を、邪魔すんじゃねえよ。 美津子先生は、いい人だぞ!