祥一は続ける。
「 コンパや、飲み屋で知り合ったのならともかく・・・ 美津子さんとは、共の友人に
紹介され、交際期間も七年だ。 いくら説明しても、お袋は、財産目当ての一点張りなんだ。 どうしたら良いんだろう・・・ 」
家を出なさい。
・・・これでは、あまりにも短絡的か。 他人事だと、メッチャ楽に、考えられるな。
でも、美津子先生が不憫だ。 とても、財産を狙うような人格には思えんぞ?
かすみが言った。
「 駆け落ち、したら? 」
・・・出た。
かすみも、エライ事、言い出しよるのう~・・・!
祥一が言った。
「 ・・・ついて来るかい? 」
ホンキか? あんた。 ドラマのようには、いかんぞ?
そんでもって、寂れた温泉宿で契りを交わし、リストカットすんの?
僕、ヤだ。
かすみとなら、逃避行してもイイけど・・ あんたとは、絶対行かない。
僕は言った。
「 お袋さん・・ いえ、お母様の誤解を解くには、きっと時間が掛かると思うの。 待ちましょうよ。 きっと、分かって下さるわ・・・ 」
・・・大人言葉は、いい難い。
僕は、とりあえず、一辺倒の言葉を祥一に返した。
祥一が言う。
「 美津子さんが、30になる前には、と思ってたんだけど・・・ もう少し、掛かりそうだ。 すまない 」
真面目で、良い人そうだ。 真剣に、美津子先生のコト、考えてるんだな。
何とかしてあげたいけど、打つ手無しだ。 ましてや今は、ホントの美津子先生じゃ
ないし・・・
注文した品が、運ばれて来た。
僕らは、無言で食事を始めた。