僕は思案した。
ヤツは階段の上だ。 状況的には、上にいるヤツが有利だ。 どうする・・・?
力・経験とも、ヤツの方が、上だ。 いや、センパイと言った方がいいだろう。 マトモにやれば、いかに相手に疲労があろうとも、僕に勝ち目は無い。
・・・『 アレ 』を狙うしか、あるまい・・・!
そのスキがヤツにあるかどうか、が問題だが・・・?
固唾を飲んで見守る、マサ・芹沢たち。

  行き詰まる時間・・・・

その時、ヤツの後ろのドアが開いた。
これだけの騒ぎを起こしたのだ。 当然、近くの居住者には、その騒ぎも聞こえている事だろう。 静かになったので、様子を見てみようとしたらしい。 細く開けられたドア
から顔を少し出し、60代くらいの老婆がコッチを見ている。
僕は演出を掛けた。
「 どうもぉ~、お久し振りですぅ~! 」
久し振り? というような表情で、大男がチラッと後ろを見た。
ソコだァァーッ!
ブンッ、という短い唸り音と共に、アンダースイングされた僕の鉄パイプは、確実にヤツの股間に吸い込まれて行った。
・・ボクッ・・!
確かな手応え。
サブが装着してくれたエルボーの部分も、期待通りにヤツのタマを直撃したようだ。
「 うぶッ・・!! 」
股間を押さえながら、つま先立ちをして大男は固まった。 目は、遠くの一点を見つめている。
・・・効いたな。
苦しいのは、よく分かるぞ? 今がイチバン辛いトコだよな? どうしてイイか、分からんくらい苦しいだろ? 分かる、分かるぞ~・・・? 悪く思うなよ。
額に脂汗をいっぱい浮かせ、大男は、歯を食いしばっている。 声も出ないようだ。 楽にしたるか・・・
今度は、脳天に鉄パイプが炸裂する。 ・・・この前から、コレばっか。
また、いい加減なウワサが広まりそうだ。