木に登ってた男の子は、ジーッとあたしを見つめていた。
「…なに?」
あたし、顔になんかついてる?
「んーん、なんも!」
そう言って彼はまた、ニカッて笑った。
なに…この人。
ほんと犬みたい。
「(ワン、お前そんなガン見したらヤバいだろ!)」
「(俺したくても、そんな勇気ねーよ!)」
「(佐倉にあそこまで言った女子初めてだし!)」
(※この場では口に決して出せない、その他大勢の生徒の声です)
そういえば、なんで“ワン”…?
まさか名前が、ワンのはずないし。
佐倉はマコって呼んでるし。
なんか最初に名乗ってたけど、いきなりすぎて忘れたよ。

