「ほらワン!」
「前へ前へ、お2人さん」
「照れるなよ~」
面白がってちゃかし出す周り。
「ほらほら、カメラ用意してやるからさ」
「ちょ、やめろよ」
なんか、バカみたい。
キスとか、そんなことで騒ぐ周りが。
「…うるさい」
ほっといてほしい。
あたし達は、あたし達なんだから。
「…え?」
「や、やば…?」
「あ、鮎沢ちゃん…?」
「やり過ぎた…感じ?」
一緒にいられればって。
隣で笑ってくれればって。
だからこそ、キスだって大事なのに。
「バカじゃないの?アンタ達の盛り上がりのネタにしないで」
シンとした教室に、低いト音でそう言い放った。

