だけど俺は、そんなことさせない。



――――“ぐいっ”



浴衣の袖口から少しのぞいた手首を、見失う前に素早く掴んだ。



「金魚すくい、勝負しようよ」

「は?」



いきなりの俺の提案に、茜は目を大きく見開いた。



「お前が勝ったら、言うことなんでも1つ聞く」

「ちょっと、なに言ってんの?」

「でももし俺が勝ったら、俺と一緒に花火を見るってことで」



茜の返事も聞かないうちに、俺は金魚すくいの屋台へと歩いていく。



「らっしゃい!」

「オッチャン、2つ」

「はいよ、600円ね」

「ちょっと郁也!どーいうつもりだよ!?」

「ん」

「え?あ、ありがと…」

「多くすくった方の勝ち!んじゃ、始め~」