「花火、一緒に見れなくてゴメンね」
あたしは空を見上げて言った。
花火の跡形もなく、星だけが静かに光っている真夏の夜空。
約束したのに。
約束は、儚くて。
所詮は口先だけの、気休めにしかならなくて。
「…オレ、屋台も花火もどーでもいいって思った」
お祭り好きのワンには、似合わない台詞。
「稀衣ちゃんがいないと、全部どーでもよくなって、オレ花火見るのも忘れてた」
そう言いながら、ワンはあたしの隣に座った。
「だから別に、どっちが悪いとかないじゃん」
ワンはあたしの顔を覗き込んで、いつものように笑った。
「でも、約束したじゃん」
「約束?」
「スキー場の花火見ながら、夏も一緒にって」
「うん、したよ」
………。
え。