…と、その時。
“――――ブチッ”
?!?!
切れた…?!
最悪だ。
こんな時に。
柄が切れた下駄は、人に蹴られてすぐに目の届かない所へと転がっていった。
この人込みの中を、しゃがみ込んで探す訳にもいかない。
お母さんのお古を履いてきたのが、失敗だった。
だいぶ傷んでたんだ。
…仕方ない。
下駄は諦め、顔を上げた。
………。
……え。
ワンがいない。
見失った。
はぐれてしまった。
予期していたことが、現実に起こってしまっている。
もう1回言いたい。
「…最悪だよ」
重たいため息を1つついて、あたしは人込みから抜け出した。
もちろん片足は裸足で。

