「迷いはしないの?」
「えー?」
波と風の音に負けないように、少しだけ声を大きくする。
「なんで飛び込んだの?怖くないの?」
ワンは振り返り、困ったように笑った。
「怖いよ」
それ、微笑みながらいう台詞じゃないでしょ。
「稀衣ちゃんにもう、会えなくるかもしれないって思ったら、急に怖くなった」
「だ、だったらなんで…?」
「んー…なんで?」
それから散々悩んだあげく、ワンの出した答えは「弟と名前が一緒だったから」。
きっと、理由なんてない。
ただ助けたかっただけ、なんだろう。
「…あ!」
???
「オレ、死ぬ前にやらなきゃいけない事あるんだ!」
「いや、もうよっぽどじゃない限り、今すぐには死なないでしょ?!やめてよもう!」
「ん、そーだけど!やらずに後悔したくないから!」
そんなにしたいこと…って何?!

