「落ち着いた?」
しばらくして体を離すと、稀衣ちゃんは少し恥ずかしそうに頷いた。
「…大丈夫」
もう泣き止んでしまってるのが、少し残念だけど。
「稀衣ちゃん、海行こ?」
「え、海?今から?!」
ベッドから出たオレは、笑顔で頷いた。
「でもワン、まだ寝てなきゃ…」
「稀衣ちゃんで回復した!だから行こっ」
稀衣ちゃんの反論を許さず、オレは手を引っ張った。
外に出ると、ちょうど太陽が西へと沈みかけていた。
「うわー、夕焼けこやけだ~!」
「夕日ね」
「夕日っておいしそーだよね」
「アンタの思考回路、絶対異常だと思う」
キレーな夕日はやっぱりキレーで、すっげーおいしそうなんだけどさ。
やっぱりオレには、景色とかそんなことよりも。
隣に稀衣ちゃんがいるってだけで、夕日も海も空も全部全部、キレーだから。
稀衣ちゃんがいるかどうかの方が、何倍も何十倍も重要なんだよ。

