泣いてる稀衣ちゃんも珍しくていいかな。
とは言えないけど。
「バカ…バカバカほんとバカ…!」
「うん、ごめん」
「…離してよ」
オレの腕の中で、小さく呟かれた言葉。
だけどオレは、それが本音じゃないって知ってる。
「離さないよ。前にも言ったじゃん」
もう離せないんだって。
「…バカ」
「うん」
どれだけ心配かけたか、なんだか申し訳なくなってきて。
ごめんねの意味を込めて、抱きしめる力を余計に強くした。
いつもより近くに感じる体温と鼓動。
抱きしめると、柔らかくていいニオイがするなって、いつも以上に感じた。

