―――夕暮れの帰り道。
「あ~おなか減った~」
稀衣ちゃんとオレと、2つの影が並ぶ。
「帰ったらすぐご飯でしょ」
クスッと笑いながら、稀衣ちゃんは呆れたように言う。
「なんかさー、今なにか無性に食べたいって時あるじゃん?」
「ないよ」
「そう?」
「うん」
「変なのー」
「アンタがね」
いつものように、どーでもいい会話をしながら歩く。
「…あ、そうだ」
何かを思い出した稀衣ちゃんが、制服のポケットをゴソゴソと探り出した。
「どーしたの?」
「飴、あげる」
そう言って稀衣ちゃんは、飴玉をオレのてのひらにおいた。
茶色っぽくて、ビー玉よりも一回り大きい飴玉。
それを口の中にほおり込んだ。

