駆け足で本屋に駆け込み、文具コーナーへと急ぐ。
そこにあったのは、ラスト1冊。
うわーよかったぁ~。
ホッとしながら最後の1冊に手を伸ばしたその時。
「あ」
「え?」
反対側から伸びてきた、もう一つの手。
思わず伸ばした手を止めた。
「あ、ごめんね、どーぞ?」
今時珍しい、群青色の着物姿の男の人は、笑顔でオレに言った。
「え、でも…」
そしたらオジサンが買えないじゃん。
あ、でもオジサンが買うと、オレが買えないのか。
「いいんだ。他を当たるから。君が買うといい」
男の人はノートを手に取ると、オレに差し出した。

