「…鮎沢さんが今までいた所とは、いろいろと違うのかもしれないし。オレに興味ないっていうのも、その通りだと思う。でもさ」
“ワン”は、真っ直ぐな瞳で私を見つめる。
「バカじゃダメなの?」
「………」
「うるさくていいじゃん。騒いで、バカやればいいじゃん」
なんで、そんな顔をするの。
ついさっきまで、子供みたいに笑ってたのに。
「一緒に騒げば、きっとうるさいなんて思わないよ?」
なんでいきなりそんな顔で、あたしを見るのよ。
「…そんなこと、したくないっ」
あたしは、逃げるようにその場を後にした。
怖かった。
あの真っ直ぐにあたしを捕らえる瞳が。
犬のくせにっ。
あんな顔するなんて、卑怯よ。
油断した。

