“―――ドクン”
あたしの心臓は大きく波打つ。
久々の2人きり。
薄暗い密室。
胸のドキドキが、全身へと伝わっていくようだった。
「稀衣ちゃん」
ワンはあたしの名前を呼ぶと、おいでおいでと手招きする。
得に深く考えることなく、招かれるがままにワンに近付いた。
その瞬間。
手招きしていた手があたしの腕を掴み、グイッと引っ張る。
ワンは無抵抗なあたしをしっかり受け止めて、ぎゅうってした。
多分、分かってた。
近づいた時点で、こうなること。
知ってて近づいたのは、やっぱりあたしもワンと同じだから。
ワンが足りなかったから。

