“―――バタバタバタ”
追ってくる気配が消えたところで足を止める。
「…逃げなくても、よかったんじゃない?」
「うん、でも」
???
“―――ガラガラガラ”
途中で話すのをやめたワンに、首を傾げる。
そんなあたしを、ワンは教室の中に引き入れた。
「でも?」
入った瞬間、古臭い紙のにおいがプウンと鼻をかすめた。
…資料室、かな。
「ワン?」
ドアを閉めてるワンの背中に問う。
「…なにも。なにもないけどさ」
「うん」
「ないけど、やっと2人になれたから」
そう言ってワンは、無邪気な笑顔を見せた。
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