「だからせめて、未来くらい信じてみたかった」
そう言う稀衣ちゃんが、微かに震えているように見えた。
弱さを見せない彼女が、こんなこと言うなんて。
オレはそんなにも、先へ先へ行ってしまいそうなのかな。
「オレだって怖いよ」
「…え」
オレは稀衣ちゃんの、少し冷たい手をそっと握った。
「この手を、誰かに取られるのが」
そう、いつだって怖い。
自分から離したりなんかしない。
「誰も取らないよ」
稀衣ちゃんはもう1つの手を、オレの手に重ねる。
「あたしはもう放せないんだから、この手を」
少し悔しそうに言う稀衣ちゃんを、無意識に引き寄せた。

