そんなオレに気付いた稀衣ちゃんと、目と目が合う。
「ワン」
オレが口を開こうとしたら、稀衣ちゃんに先を越されてしまった。
「助けてくれて、ありがとう」
そういって微笑む。
「…ワン、付き合い始めは犬だったのに、最近はなんか、時々犬に見えない時がある」
???
「だってオレ、もともと犬じゃないし…」
「そーいう意味じゃなくて!」
???
「…じゃあ、どーいう意味?」
そう尋ねたら、稀衣ちゃんは少しだけ下を向く。
「…怖いんだ」
「え…?」
小さな声が、微かに聞こえてきた。
「いつも。ドンドン先に走ってっちゃうワンに、手を離されそうで」
…手を離す?

