慌てて教室を飛び出し、走りつづける。
耳の感覚が無くなってきても、鼻が赤くなってきても。
稀衣ちゃん家まで、あと少しというところで、2つの人影がオレの目に留まる。
はっきりとは認識出来ないけれど、近付くに連れてそれは確信へと変わっていく。
片方が稀衣ちゃんなのは確かで、もう片方は男っぽい。
2人は立ち止まり、男が稀衣ちゃんに迫っているように見える。
その時、男の方が稀衣ちゃんの肩に手を置いた。
オレは力いっぱい地面を蹴って跳び上がり、
「触んな!」
“―――ドカッ”
男の横腹を蹴り飛ばした。
キレイに足から着地したオレと、倒れ込む男。
「わ、ワン?!」
「稀衣ちゃんっ、大丈夫?!」
「うん」
…良かった、間に合った。

