「じゃ、あたし今日は帰るね」
まだ薄明るいし、今日くらい1人で帰っても平気だろう。
…それに。
あんな顔のワンを、見ていたくはなかった。
前を向いていない君の目は、いつもみたいに輝いてはいなくて。
あたしを見る目とも、違っていて。
人間なんだから、俯くことだってあると思うし、当たり前だと思う。
けどあたしが原因で、俯かせたくはない。
輝きを、奪いたくはない。
あたしはただ信じたいだけなんだ。
君と一緒につくる、未来を。
しばらく1人で帰っていなかった道を、今日は1人で歩く。
隣に温もりを感じないだけで、景色までもが違って見える。
「こんなにも、家まで遠かったっけ…?」
2月の風は冷たくて、あたしは足を速めた。

