「あたし、そろそろ仕事戻んないと…」
あたしはワンから目を逸らし、お店へ戻ろうとする。
もう、考えない。
頭から追い出すの。
「鮎沢…!」
“―――ぐいっ”
?!?!
「…な、なに?」
慌てた様子の佐倉が、後ろからあたしの腕を掴んだ。
佐倉のこんな顔は珍しい。
「あれ…いや、なんでもない。悪い。(泣いてんのかと、思った)」
???
「じゃ、行くね」
何だったんだろう?
なんでもないなら、いいけど。
それからは、本当にワンの事は頭のすみに追いやって、仕事に集中した。
正確には、都合よくもお客さんが沢山来て、余計なことを考えてる暇なんてなかった。

