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「ゲホッゲホ。将太郎。何焼いてんだよ?」
 千秋が、むせりながら訊ねた。

「これが?千秋よぐ気付いだな。本日のスペシャル食材だ。健康に良いんだよ。」
 将太郎はむせかえる煙に身を包み答える。

「臭えよ。何やってんだ!」
 別の部所の男が叫ぶ。その男は、何出弥製作所特有のやくざ顔をしている。

「そごの“おんっあ”!何言ってんだ。これはな、“ヒマラヤトカゲ”の黒焼きだ。真っ黒にやがねっきゃ、意味ねぇべ。」
 将太郎が和やかな笑みを見せる。

「…そ…そうか。頑張れよ。」
 将太郎の言葉に、やくざ顔の社員が静かになった。

「ほれ!おめらも、食えや。一匹一万のスペシャル食材だど。」
 将太郎は真っ黒に焦げた、ヒマラヤトカゲを皆に勧めた。

 だが他の面々は聞く耳を持たない。それどころか、無視している感も見えた。

「将太郎。そんな物、誰も食わないよ。」
 肉をがっつきながら、千秋が助言する。

「おめら、馬鹿だな。これさ食えば、健康さなっで、“髪の毛”も生えるっちゅうに。」
 将太郎が言ってそれを口にした。


『最後の台詞が本音か。』千秋が思った。

「うん…にげぇ!だげども、我慢するだおら我慢づぇえだで。」
 将太郎はヒマラヤトカゲを焼いては食い焼いては食いを続け出した。