???

「ぎゃーあ!」
 男が叫びのたうち回る。その両腕がグニャリと、くの字に曲がっている。


 大黒パーキングは騒然となっていた。

 逃げ惑う人々。その場を離れようと続く車の列、順番を巡っての小競り合いも多々見えた。

 駐車スペースにはまだ些少(さしょう)の人垣があった。あのあざらし狩りを始めた“チーム本牧オデッサ”達だ。



「リーダー!あつし、助けなきゃ。…」
 若者の一人が傍らの男に言った。

「あ…ああ。でもよ。」
 リーダーと思し(おぼし)き男が言う。しかしそのの心は既に折られていた。

 ピリリー!笛の音と共に二人の警官隊が現われた。

「君達、そこをどいて。」
 警官隊は人垣をかき分けて突入した。

「な…何だこれは!」
 その警官隊の目に飛び込んだのは、凄まじい光景だった。

 ジークレがあつしの体を両腕で上に持ち上げ、グルグル振り回している。

「ぎゃあ!助けて!」
 あつしが叫ぶ。その顔面は無残に腫れあがり、腕は折られていた!

 更にジークレの足元には、真っ赤に染まった血の海が出来ていた。その中を数人の被害者が、逃げようと必死に這いずりまわっている。


 阿鼻叫喚(あびきょうかん)の無間地獄(むけんじごく)を呈していたのだ。


「何だこのあざらし。数日前に現われたあざらしとは違うぞ。でかいし…三メートルはあるか?」
 警官が呟く。戸惑いを隠せない。

「動くな!その男を解放しろ!」
 もう一人の警官が拳銃を引き抜き、ジークレにかざした。

「ヒキチギル!」
 ジークレは警官の言葉を聞く事なく、あつしを掴む腕に力を籠める。

 ブチブチ、バギーッ!あつしの足が引きちぎられた。まるで玩具(おもちゃ)のように!