四人は買い物を終え、洒落たカフェで食事を取っていた。

 この時刻(ころ)になると、既に空は夕闇に包まれていた。


「しかし今日の鈍平さん、変だったよな。」
 ヨッタが呟いた。

「本当だぜ。あの口笛の名手が“ヒーヒー”だってよ、空気が漏れたみたいだったよな。」
 貴ボンが同意する。

「駄目だよ、鈍平さんの悪口言っちゃ。病み上がりなんだから、仕方ないでしょ。」
 京子が言った。

「ご…御免なさい。」
 頭を掻き、言うヨッタ。

「怒んなよ。」
 貴ボンは口をさらにタコの様に尖らせ言った。

「そう言えば、鈍平さんの親族の方が入社したそうですね。どのような方ですの?」
 紫織が訊ねた。紫織は違う部署に所属しているので、“あの二人”とは面識がなかった。

「二人共おっちゃんだよ。」
 ヨッタが答える。

「あの二人、俺は気に食わねえ。煙草ばっか吸いやがって。」
 貴ボンが食い縛った歯の間から、漏れるように言った。

「だよな、三十分置きだぜ。しかも鈍平さんまで引き連れて…あ、違うぞ今のは鈍平さんの悪口じゃ。」
 慌てて京子に言い訳するヨッタ。

 そのヨッタを見て京子はクスクス笑った。


『ヨッタ、何も“気付いて”ないんだ。その方が任務しやすいかな。取り合えず“泳がして”おこう。』ポゴはずっと会話を聞いていた。そしてそう考えた。

「大変ですのね、そのような方と、お仕事をするなんて。」
 紫織が心配げに、ヨッタを見つめた。

『……』紫織を直視して、ポゴが紅潮する。

「でも、機械の操作は凄いんだよ。」
 ヨッタが感嘆の声をあげる。

「そうだけどよ、仕事に関係ない物、作ってたぜ。あいつ等、“改造銃”作って売る気なんだよ。海外のルートで。」
 貴ボンはさらりと言う。

「どんな組織だよ、それ。」
 ヨッタが呆れた視線を送る。

『あながち間違いでもないよ』ポゴが思う。

「私、ちょっとお化粧直しに、行ってきますわ。」
 紫織が席を外す。

 貴ボンはその様子を伺っていた。

「悪い、俺も便所行ってくる。」
 そして言って席を外した。