犬の散歩。仕事を毎日定時で上がるヨッタの日課だ。

 犬の名前は、くっきー。セントバーナードそっくりの雑種である。


 くっきーは、八年前、生まれて間もなく捨てられていた。

 捨てられていた所が、貴ボンのアパート前という事もあり、貴ボンに拾われ飼われた。

 だが生まれついてものぐさな彼の事、三日で飽きてしまった。そしてヨッタに無理矢理押しつけたのだった。



 初めてヨッタの所に来たくっきーは、まるでボロ雑巾の様だった

 当初、くっきーの人間不信はひどいものだったが、ヨッタの愛情によってみるみる回復していった 



 そんな健気(けなげ)なくっきーではあったが、ヨッタには気付いてない事が一つあった。

 それはくっきーが雑種ではなかった事だ。実は世界でも、いや歴史上でも珍しい超血統種だったのだ。



「おい、あんまり引っ張るなよ。」

 ヨッタの散歩コースは自宅の裏の旧道だ。

 都内へのアクセスも便利であり、かつては車の往来もあったが、都市再開発の流れから、外れた今となっては滅多に通る車は無かった。



 ヨッタ達が、散歩を始め既に一時間余りが過ぎていた。生い茂る木々の間から夕日が射し、ヨッタ達を紅く照らす。