この県の南部に、龍神伝説で有名な小島がある。


 この近辺に隕石らしき物が落下したのは、今から一時間程前だ。

 一時は騒然としたものだったが、日付が変わった今ではいつものように数名のサーファーがいる程度だった


「はあー、もう帰るか。女はいねぇし。」
 一人のサーファーが呟いた。

 この男、ウェツトスーツで身を包み、サーフボードを脇に抱えてはいるものの、その体は乾いたままだ。

 只の岡サーファーの様だ。サーファーの姿をしていれば、女にもてる。その目論みは、砕け散っていた。


「ん!何だ?」
 帰り支度をしている男の目に、ある光景が飛び込んだ。

 月明かりに照らされた水平線、そこをバシャバシャと歩いている人影が見える。

「何だあれは…」

 その人影はどんどん近づく。背中には大きな魚らしき物を担いでいる。

 やがてそれは男の前に姿を現した。

「な…化け物!」

 それは、トランクだった。

「ガルラァ!」
 トランクが叫ぶ。男が腰を抜かして、座り込んだ。

 担いだ魚が、顔を男に向ける。
「僕ちゃん達、怪我ちてるでちゅ。貴様の家までちゅれてっちぇ、介抱するでちゅ。」
 キャミーだった。

「ぎゃーあ!」




「今度は、間違いにゃいんでちょうね。」
 キャミーが男を睨む。さっき、キャミー達は騙されて、男の仲間の元に連れていかれたのだ。無論仲間は、トランクによってボコボコにされたのだが。

「は…はひ、間違いごだいません。ここが私の家でふ。」
 男の顔は、トランクにヤキを入れられて、ボコボコだった。