「やろう!どこ行った、くまなく探せ!」

「まだ近くに居る筈だ、逃がすなよ!」

「はいっ!」

 東日本最大の繁華街、眠らない街とも呼ばれるその街で、屈強な胸元に金のバッチ(誇り)を携えた者共が、誰かを探していた。

 気になるのは、その内の幾人かが怪我をしている事だ。


「コージ!てめえ、店の売り上げまで奪われたそうだな。気合いが足んねーんだよ、てめえは!」
 オールバックの男が、金髪の若造に気合いを叩き込む

「す…すみません、若頭(かしら)。」
 金髪が頭を下げた

「もうよいでしょう、若頭。比崎までやられてるんだ、相手は相当な野郎でしょう。」
 そう言った男が、後方を振り返る。比崎と思しき男が鼻血を出して、ガクガクと震えている。

「しかし、やろう、俺達を“東日本貴神会矢島組”と知ってやりやがったんですかね?一体何処の組の者だ。」
 男が若頭を振り返った。

「足利組か?三多組か?だがあんな頭の大きい男、しかもあんな“はっぱ”みたいな 髪型の奴見たこと無えぜ。」
 若頭が言った。そしてネオン煌めく街を眺めた




「そうか…頑張ったなヨッタ。…ああ、おめでとう。…そうだ。立派な英雄(ヒーロー)だよお前は…ああ、じゃあな。」
 ごんぞが携帯の電源を落とした。

 そして懐から“あの英雄の写真”を取り出した。

「ごんちゃん。何その写真?うわー彼女の写真?」
 傍らの女が言う。

「違うよ。ほら。」
 ごんぞが女に写真を見せた。

「本当だ。なぁに?この子、凄いリーゼント!うわータコそっくり!」
 女は諸手を打って笑う。