ところ変わって、海風の吹く街中。


 昼下がりの街中は、穏やかな青空が広がっていた。


 厚く重い衣を脱ぎ捨てた街並は、夏に向かって一直線のようそうを見せている。


 夏の匂いは、人々の心を解放する。それは、人間もただの動物である事を再認識させられる瞬間なのかもしれない。



 そんな街中を一台の車が疾駆(しっく)する。


 …赤いハイラックスサーフ…


 時刻は恋人達もたゆたう、午後三時。

 それらを邪魔するが如く乱雑な運転を続ける。


「“ごんぞ”運転あらいよ。」

「うるせえー黙ってろ。大体この街は、カップルだらけじゃねーか!」
 ごんぞと呼ばれた、運転手であるスーツ姿の男がわめく。



 高いタワーと大観覧車がトレードマークのこの港街は、確かに若いカップルの姿が目立つ。