「はん!そんなのが英雄(ヒーロー)なわきゃないだろ?まあ、そうだな…これでどうだ。」

 ごんぞが立ち上がり部屋の奥の机に進む。そして何かを掴んだ。

「こいつは、先日ある街で俺に絡んできた野郎から奪った物だが…。行くぞ!ヨッタ、臍下丹田(せいかたんでん)に、力を込めろ!」

「せ…せいかたんでん?」
 その意味が分からず、戸惑うヨッタ。

「へその下だよ!」
 ポゴがヨッタに伝える。そして、またヨッタの体の中に姿を消した。


 ごんぞはヨッタに向けて右手をかざす。その手には、拳銃が握られていた。

「うわっ!やっぱりヤク…
 ヨッタは目をつぶり、臍下丹田に力を籠める。するとヨッタの体が赤みを帯び始めた。

 ダキューン!

 ごんぞの拳銃が火を噴いた。


「!……あれ?」
 胸部に何かが当たった感触はあった。だが何の異常も痛みも無かった。

「どうだ、これでわかったろ。」

「…銃弾も跳ね返す体になったって事?」

「防御力だけじゃない。お前の腕力・脚力・全ての肉体能力がパワーアップしたのさ。分かるかヨッタ、お前は英雄(ヒーロー)の能力を手に入れたんだ。」
 ごんぞがヨッタを指差した。

「そう言えば体が紅くなって熱い、何か力が漲って(みなぎって)いるような…」
 興奮し体が震えるヨッタ。


 ヨッタの肩からポゴの顔が浮き上がる。そして言った。


「ヨッタ、君は英雄(ヒーロー)だ!」