ブルルル。千秋の携帯が震えた。

 取出し通話する千秋。
「よお、将太郎。腹減ったな。」
 相変わらず飄々(ひょうひょう)と話す千秋。

『千秋!おめ、あざらし捕めでこや。銭なら、いっぺ出すがらよ!』
 電話の向こうで将太郎が吠える。

「どうしたんだよ?あざらしなら捕まえたろ。」
 千秋が訝しげに訊ねる。

『消えちまっただよ!煙みでぐパーッと!』


 キャミーが意識を失った事で、ジークレの姿も消えたのだ。


「諦めなよ。髪の毛無くても生きていけるよ。…もう切るぞ。」
 言って千秋が、通話ボタンを切った。

「…相変わらずだな将太郎さん。…でも『髪の毛無くても生きていけるよ』って、何すか?俺、心が痛いっすよ。」
 貴ボンが口を尖らす。


 将太郎の“秘密”は、千秋とヨッタしか知らない事だった。

 その言葉に京子は貴ボンの頭を見つめた。

「貴ボン、その頭…」

「え?京子…まさか。」
 不安に駆られる貴ボン。

「ぎやーははは!」
 吹き出す京子。

「き…京子お姉さま?いかがいたしたのです。」
 紫織が困惑する。

「…不治の病か…」
 貴ボンはガックリと肩を落とす。

「ははは、ご…後免ね。私のトラウマだから。でも、その頭に慣れるよう努力するよ。」
 京子は涙を吹きながら言った。

「本当か?京子。…確かに昔より回復している。やっぱり愛の力だな!」
 貴ボンは感極まり京子に抱きつこうとする。

 ビシッ!京子のビンタが貴ボンに入れられた。



「ぎやーははは!止めて近寄らないで!」

 そして笑い声が響き渡った。