「はあー冷たいねーヨッタちゃんは、いいから聞け!」
 言って貴ボンは、ヨッタの首をしめ始める。

「わ…分かったって。きく、聞くから。」

「へへへ。最初からそうじゃなきゃ」

 貴ボンは学生の頃、この辺一帯を統べる(すべる)不良で、力でヨッタが敵う(かなう)はずは無かった。
 

「新種発見だよ。」

「は!?」

「今朝な、起きると外から変な鳴き声がすんだよ。朝っぱらからうるせーな。て思ってよ、部屋の戸開けたのよ。そしたらさ、へへへ…何だと思う?」

「さ、さあ?」

「“たまちゃん”だよ。あざらしの。」

「あざらし?」

「そう…あざらし。しかも新種だぜ。形はあざらしなんだけどよ、目の周りに変な模様があってよ“輪っか”みたいな。更に後頭部辺りの毛色だけ真っ黒でさ!」
 貴ボンは興奮気味に言う。

「本当かよ?」

「本当だって。」

「どっかの動物園から、逃げ出してきたのかな?そいつどうするのさ。」

「まずテレビ局に情報流して出演料いただくべ。他にも新聞・雑誌・ラジオ…それだけでもいい金になんべよ。そしてしまいには、動物園か博物館に売り込むって寸法よ。」
 貴ボンが腹企みを語った。

「…お前なあ…相変わらずあくどいな。それに、そんなにうまくいくのかよ。」

「まあ見てな。俺は、あいつを足掛かりにして、でっかくのし上がってやるぜ。」
 大胆な貴ボンであった。

『あ…呆れた奴だな、まさかここまでとは。でも、こいつならありえるか。』ヨッタは貴ボンの顔をじっと見る、団子の様な鼻とおちょぼ口が目に入った『こんな変な顔してるくせに…』考えながらも、恐ろしさに、生唾を飲んだ。